第4教室:『仏作文』①スタンダードフランス語講座 / ②『吾輩はネコである』

『ジュール叔父さん』と『星』の学習は終了、過去記事保存しています.た.

ジュール叔父さん(79)モーパッサン作品集より(フランス語学習)


ジュール叔父さん(79)


——————————【79】————————————————

 Je  lui  laissai*   dix  sous   de  pourboire.    Il  me
remercia: 
  « Dieu  vous  bénisse,  mon  jeune  monsieur ! »  
  Avec  l' accent  d' un  pauvre  qui  reçoit  l' aumône.
Je  pensai  qu' il  avait  dû  mendier,  là- bas ! 


.——————————(訳)————————————————

 ぼくはチップを10スー持たせてやった.男は感謝の
念を述べてくれました:
 「神の祝福が御身にありますことを!」
それは施しを受けるときの乞食の口調でした.ぼくは
男が向こうでは物乞いをしていたに違いないと思いま
した.
  
 
——————————《語句》——————————————
                            
sou:1スーは5 サンチーム.10スーなので50サンチーム.
   1フランが100サンチームなので、0.5フラン渡し
   ている.イメージとしては1フランを1万円札だと
   想像するとよいかも知れません.チップに5000円
   奮発したということにしましょう.   
*laissai:原書、及び大学書林短篇集Ⅱはlaissai、
    第三書房、大学書林語学文庫ではdonnai
    意味は同じだがニュアンスは若干変わる.
    laisser 「持たせてやる」、
    donner 「与える」      
pourboire:(m) チップ、心づけ
    pour + boire = 飲み代→酒手→チップ
pauvre:(m) 貧民、貧乏人       
accent:[アクサン](m) (感情を表わす)口調、語調、調子    
aumône:[オモーヌ](f) 施し、施し物         
mendier:(他) 物乞いをする      
là-bas:向こうでは、あちらでは;
    アメリカで、ということでしょう.
   「船上で」と解釈できないこともないが
    その場合はici でじゅうぶんでしょう.


——————————≪註釈≫——————————————

Avec l' accent d'un pauvre qui reçoit l'aumône:
主語も述語動詞もありません.なければどうするか?
読み手のほうで付け足します.ではなにを付け足すの
がいいか?C'était prononcé 辺りでしょうか.
C'était prononcé avec l' accent d'un pauvre qui reçoit 
l'aumône.     その発話は乞食が施しをもらうときの
ものだった.
なぜavec が使われているのか分かりにくい方もいらっ
しゃるかもしれません.文には現れていませんが、
男は感謝の気もちを「込めた」からです.avec には
「~を込めて」という意味があります.