第4教室:『仏作文』①スタンダードフランス語講座 / ②『吾輩はネコである』

『ジュール叔父さん』と『星』の学習は終了、過去記事保存しています.た.

ジュール叔父さん(14)モーパッサン作品集より(フランス語学習)


『ジュール叔父さん』(14)


———————————【14】——————————————

  Et  chaque  dimanche,   en*¹   voyant*²   entrer   
les   grands  navires*³  qui  revenaient*⁴ de  pays  
inconnus*⁵ et  lointains,*⁶ mon  père  prononçait*⁷ 
invariablement*⁸ les  mêmes  paroles*⁹:
  ——Hein ! *¹º  si  Jules*¹¹  était  là  dedans,*¹²  
quelle  surprise ?

————————————(訳)———————————————

  そして日曜日の度毎に、遠い見知らぬ国から繰り
返し現れる大きな船が入港するのを眺めながら、父
はいつも同じ言葉を発した:
  ——なあ、お前たち、もしあの(船の)中にジュー
ルが乗っていたら何とびっくりなことだろうな.


———————————《語句》———————————————

*1) en + 現在分詞: (ジェロンディフ) ~しながら
*2) voyant:(現在分詞) <voir(他)見る
    en voyant ~ 「~を見ながら」     
*3) navires:(m/pl) <navire [ナヴィール] 船、船舶  
*4) revenaient:(半過去3複) 
    <revenir (自) 繰り返し来る、再び現れる     
*5) inconnus:(形/過分/pl) <inconnu (形) 見知らぬ、
          知られていない (à, de, に)   、未知の
*6) lointains:(形/pl) <lointain(e)[ロワンタン/ロワンテーヌ] 
     遠くの、はるかな、
    pays lointain 遠くの国、/ passé lointain 遠い過去        
*7) prononçait:(半過去3単) 
    <prononcer (他/自) 口にする、言う
*8) invariablement:[アンヴァリアブルマン](副) 
    変わることなく、相変わらず、
    いつも、常に       
*9) paroles:(f/pl) <parole:言葉      
    paroles aimables / やさしい言葉    
*10) Hein !:(間投詞)[同意を求めて] 
    そうでしょう、ねえ、
*11) Jules:(人名) ジュール; 
    タイトルの「ジュール叔父さん」のこと 
*12) dedans:(副) 中に、内側に     
        


———————————≪文法≫———————————————

   本文1行目: en voyant entrer les grands navires
        大きな船が入って来るのを見ると
voir (見る) は知覚動詞なので、知覚動詞の構文を作ります.
本文では voir の主語は「お父さん」なのでジェロンディフ
を平文に書き換えて、さらに現在形で説明してみます.
   Mon père voit entrer les grands navires.
  父は大きな船が入港してくるのを見る.
 
英語と語順が違うので面食らった方もいらっしゃる
ことでしょう.
  My father sees big ships come in.  S + V + O + 不定
    O ∔ 不定詞 
の部分では目的語のOが不定詞の意味上の主語Sとなる.

しかしフランス語では、不定詞が自動詞のときには、
  Mon père voit entrer les grands navires. 
    S + V + 不定詞 + O
となって、不定詞の意味上の主語が不定詞の後ろに
回っています.

  Je vois courir un chien. / 
  私は犬が走っているのが見えます.
  J'entends siffler le train, / 
  私は汽車が汽笛を鳴らしているのが聞こえます.

 では英語のような語順にすれば、だめなのでしょうか?
   Je vois un chien courir. は非文でしょうか?
 いいえ、確かに文としては正しいものです.
 ただ、不定詞に副詞がついて
 いないときには、不定詞の主語は後に置く方が
 落ち着きがよい、とのことです. 
    
 不定詞が他動詞のときは英語と同じ語順です.
Je vois mon frère danser une valse. / 
兄(弟)がワルツを踊っているのが見えます.
J'entends Marie chanter une chanson.
私はマリーが歌を歌っているのが聞こえます.

ここで英語と違う面白い点がフランス語にはあります.
実はこういう場合フランス語では、
知覚動詞の主語になっている名詞を
à またはpar をそえて置くことができます.
   J'entends chanter une chanson à (par) Marie.
  私はマリーが歌を歌っているのが聞こえます.